July 19, 2010

【読書】翔ぶが如く(10)

遂に終わってしまいました。

西南戦争、武士の世、は終わり
本当の意味での明治維新がここで成立しました。

薩摩武士達が次々に己の生涯を終えるさまは
史実としてそうだとしても
死ぬな、死ぬなー!!と何度も叫びたくなります。

語弊がカナリありますが、画になる死に方です。
切なさでとても胸が苦しくなります。

桐野のそれは特に象徴的で
塁の上に立ち弾雨に身をさらして、自分が死ぬまで打ち続けるというのは
彼が薩摩美学のままに育ったのを象徴しています。

この異常な戦いぶりは
意識的に何かを形而上化しようとし
武士時代の最後を昇華してやろうとしているようでした。

薩摩が落ちたことを聞いた、大久保ら新政府側の薩摩人は
精神的に異常をきたしていきます。

自分の友を殺してしまったという事実は
自分の行動を正当化する以外に
精神を守る手段がないほど、自責の念は大きかったようです。

とにかく薩摩に始まり薩摩に終わった全10巻でした。

あとがきにこうあります。
この作品の主人公は"西郷という虚像"です。
それを恐れるモノ、かつぐモノ、希望を託すもの
これらが繰り広げる人間現象を描いています


全ての人には薦められませんが
司馬遼太郎先生のドライな俯瞰視点に脱帽したい方は
是非読むべきだと思います。