January 23, 2010

【読書】故郷忘じがたく候

胸が詰まり、深く考えさせられる作品でした。
司馬遼太郎先生の作品は言うまでもないことですが
コレは、いわゆる司馬遼太郎の歴史ものではないです。

物語は鹿児島の在日朝鮮人のお話です。
主人公は沈さんという方で、陶器を作るお仕事をしています。
彼の一族は秀吉の朝鮮出兵の時に、鹿児島へ連れてこられ
彼はもう14代目ということになります。
もちろん朝鮮語はわかりません。

沈さんは、鹿児島の友達の間では最も鹿児島人らしいと
言われるくらいの人だったようです。

それでも、旧暦8月15日の夜は
故郷の方角に向かって先祖に祈りをささげるという
何年経っても故郷へ思いを馳せられていました。

子供の頃は、自分のことを日本人だと信じ
ひどいいじめを受けながらも、日本人は強い民族だと
泣いてはいけないと、いじめっ子には涙を見せませんでした。

大人になり、朝鮮の大学にゲストスピーカーとして呼ばれた時に
戦前(ww2)の日本の振る舞いについて語られます。

"確かに日本はひどいことをした。だけど言い過ぎは後ろ向きです。
朝鮮はこれからの国家です、前進しなくてはならない。
君達は36年なら、私は400年なんです。"
と言い放ちます。

次の瞬間、講堂には拍手ではなく
学生達の韓国の歌が響き渡りました。
歌が終わるまで震えて立ちすくんだとの事です。

とても美しいノンフィクションでした。
自分自身は自分がidentifyする以外にないんです。
そういう一途さは、とても清いと思いました。

短編なのでさくっと読めるので、また今度読もうと思います。