胸が詰まり、深く考えさせられる作品でした。
司馬遼太郎先生の作品は言うまでもないことですが
コレは、いわゆる司馬遼太郎の歴史ものではないです。
物語は鹿児島の在日朝鮮人のお話です。
主人公は沈さんという方で、陶器を作るお仕事をしています。
彼の一族は秀吉の朝鮮出兵の時に、鹿児島へ連れてこられ
彼はもう14代目ということになります。
もちろん朝鮮語はわかりません。
沈さんは、鹿児島の友達の間では最も鹿児島人らしいと
言われるくらいの人だったようです。
それでも、旧暦8月15日の夜は
故郷の方角に向かって先祖に祈りをささげるという
何年経っても故郷へ思いを馳せられていました。
子供の頃は、自分のことを日本人だと信じ
ひどいいじめを受けながらも、日本人は強い民族だと
泣いてはいけないと、いじめっ子には涙を見せませんでした。
大人になり、朝鮮の大学にゲストスピーカーとして呼ばれた時に
戦前(ww2)の日本の振る舞いについて語られます。
"確かに日本はひどいことをした。だけど言い過ぎは後ろ向きです。
朝鮮はこれからの国家です、前進しなくてはならない。
君達は36年なら、私は400年なんです。"
と言い放ちます。
次の瞬間、講堂には拍手ではなく
学生達の韓国の歌が響き渡りました。
歌が終わるまで震えて立ちすくんだとの事です。
とても美しいノンフィクションでした。
自分自身は自分がidentifyする以外にないんです。
そういう一途さは、とても清いと思いました。
短編なのでさくっと読めるので、また今度読もうと思います。